弁証法的行動療法
Dialectical Behavior Therapy
DBT は弁証法的行動療法の略です。境界性人格障害を持つ人々のためにリネハン博士により1980年代に確立されました。その後多くのランダム化比較試験を繰り返し、摂食障害、依存症、双極性障害、ADHDなど診断名を超えて多くの心理状態や精神疾患に有効であることが証明されてきました。
どのような状態に対応するのか
次のことが難しいと感じているのであれば、DBTは効果があると思います:
感情とうまくつきあえない: 刺激に敏感で感情の起伏が激しく、一旦強い感情を持つとなかなか平常心に戻れない。
衝動的な行動をとる: 感情にまかせて危険、または意図しない行動をしてしまう。一方で苦手な場面を衝動的に避ける。
考え方が頑な: 白か黒かの考え方が多く、一旦こうと思いこむと他の可能性を考えられない。妄想的な発想がある。また苦痛を伴う思考を避けるために解離する。
激しい人間関係: 親、パートナーなど近い人と衝突が多く長続きする人間関係が築けない一方、見放され不安が強い。
アイデンティティ: 自己概念が弱く自分が何者か分からない一方、自分に厳しいルールを課して、自分を否定し続ける。
診断名にこだわらず、ご自分の行動パターンで何が苦しいのかを考えてみましょう。
今現在精神科や心療内科にご通院なさっている方は主治医様の承諾が必要です。
セラピーの4つの構造
個人セラピー: 皆さまには感情とターゲットとなる衝動行動をモニターする日記を毎日つけていただきます。セッションではそれをみながら、ご自身が一番大事だと思う出来事と、それに関連したご自身の行動や感情を理解します。そのうえでDBTスキルをご自身の環境に当てはめて使っていく練習をしていきます。
グループ・スキルトレーニング: 隔週で同じような悩みを持つ方々と一緒にDBTのスキルを学びます。DBTは行動療法なので、学んだ新しいスキルのうち、自分に役に立つものを繰り返し練習することで自然に今までとは別の対応ができるようになることを目指します。
電話コーチング: 最初のうちは今までと違う行動はなかなか自然にはでてきません。DBTの全てにご参加いただける方には 新しいスキルを重要な場面で使っていただくためにお電話をお受けします*。10分以内の短い電話で今その場面でどのスキルが使えるのかを確認するための会話です。普通のセラピーではありません。 (*個人セラピーのみの方には対応しておりません。)
セラピスト研修: DBTをもっとも効果的に皆さまにお届けするためにDBTセラピストは週一回自身のセラピースキルを振り返って、仲間のセラピストに相談しています。皆様には直接関係ないかもしれませんが、これなしに、DBTはDBTとは言えません。
スキルトレーニングで学ぶことは
マインドフルネス: まず、自分の感情や思考、衝動に気づくこと、自分のマインドを今、この時、たった一つのことに集中すること、また自分がどのように他人とつながっているかを認識する方法を覚えます。
心の痛みに耐える: 目の前で起こっているクライシスが引き起こす心の痛みを受け入れて、状況を悪化させることなく事態を乗り切る方法です。同時に現実を現実のまま受け入れることを学びます。クライシスは依存行動によって引き起こされることが多いので、依存行動とい衝動にも対応します。
感情とうまくつきあう: 感情は体感、内臓感覚、知覚、思考、表現、すべてを巻き込むシステムです。すべての角度から自分の感情を理解し、正しく名前をつけることが感情とうまくつきあうための第一歩です。クライシスに対応するには普段からポジティブなエネルギーを蓄積することが大事なので、ここでは 自分が何をしていると幸せに感じるのかも見つけて実行していきます。
長続きする大切な関係: 大切な関係を長続きされるには、関係自体を育てる努力と同時に、自分のニーズをしっかり満たし、自分を労わり、大切にすることも大事です。このバランスを崩さないためのスキルを学びます。また、人から認められなくても自分で自分を認めること、過去の人間関係で追った心の傷と折り合いをつけていきます。