弁証法的機能不全 1

まず下の4つの例文を読んでください。それぞれに二つの意見があります。どちらが正しいか考えてください。

  1. A: チーズは乳製品だから健康に良い。 B: チーズはカロリーが高いから健康によくない。

  2. A: 田舎の生活は退屈だ。 B: 田舎の生活は心が落ち着く。

  3. A: 健康のために食事に気を付けるべきだ。 B: 心の健康のためにはあまり神経質に食べ物のことを考えすぎないほうがよい。

  4. A: 雪いっぱい降ってほしい。スキーが好きだから。 B: 雪が降ると困る。学校に行くのがすごく大変になる。

ご自身の答えをちゃんと考えましたか? ちゃんと答えを覚えていてくださいね。


今度は、下の文章を読んでください。今回もちゃんと答えを考えてください。

あなたには思春期のお子さんがいます。お子さんに「家にばっかりいないで外で自転車に乗るとか、なにかもっと建設的なことすれば?」と言うと、お子さんからは、「建設的なことしてるじゃん。今オンラインで友達とすごい大切な話をしているんだから」という答え。どちらが正しいですか?

今度は恋愛関係を想像してください。喧嘩の真っ最中にパートナーに「なにをしたって君は怒るんだから嫌になる!」と言われ、あなたはとっさに「ひどい!怒っているのはあなたじゃない!」と答えました。どちらが正しいですか?


最後はこんな場面です。あなたは何かに失敗した…と落ち込んでいます。誰かが後ろから声をかけてくれます。「よくできてたと思うよ。」どちらが正しいですか?


考えてみましたか?


最初のグループの質問では、多分こんな風に答えた人が多かったのではないかと思います。「どっちも正しいんじゃない?」「立場と場合によるよね。」「どっちも主観だから正しいも正しくないもないよ。」多分私もそう答えると思います。自分が話題の当事者ではなかったり、自分に直接影響のない当たり障りのない話題だったりすると、両方の意見のなかに「分からなくはない」「まぁ、確かに」と思える部分を見つけることができます。


ところが、二番目のグループの質問のように、問題の渦中で自分と誰かの意見が合わないとき、特に険悪なムードになってしまっていると、この「分からなくはない」「まぁ、確かに」と思える人間の貴重な能力がどこかにいってしまいがちです。そしてどうしても自分が正しいと主張したくなったり、相手に分からせたいと思ったり、絶対引かないぞと意固地になったり、どうして相手が間違っているかを理詰めにしたりしたくなる衝動に駆られます。平行線が続くと、もういいやと相手を疎遠にしたいとさえ思います。一見相容れない反対勢力が共存し、その矛盾の中にこそ智慧があることを完全に忘れてしまっているという意味で、これらの状態は弁証法的に現実を理解できていない状態です。


現実の一部を見てそれが全てと思い込み、他の考え方をすべて拒絶してしまった経験が皆さんにもありませんか? 誰かと衝突が起こっているときには、相手から見える現実を考慮する度量を持たない限り話し合いも和解もありえません。DBTでは、複数の、時として矛盾する現実を両方受け入れ、どちらの主張も満足するような解決方法を見つけていきます。

#DBT#dialectical behavior therapy#弁証法的行動療法


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